特集展示「公慶上人による江戸復興」
平成27年6月30日(火)〜8月10日(月)
永禄10年(1567)、東大寺は戦国時代の勢力争いに巻き込まれて、大仏殿をはじめ多くの堂舎を戦火で失いました。世の中が混乱している中、すぐに仮の修復がされましたが、本格的な復興は江戸時代になってから、公慶(こうけい)上人が中心となって始められました。
公慶上人は損傷した大仏さまを修復し大仏殿再建の道筋をつけましたが、大仏殿の完成を見ることなく、宝永5年(1705)7月12日(旧暦)、志半ばで亡くなりました。その後、公慶上人の遺志を継いだ弟子たちの手によって伽藍が復興されました。
公慶上人や弟子たちの「大仏さまを修復して大仏殿を再建する」という固い決意と不屈の精神がなければ、われわれは今日の東大寺のすがたをみることができなかったでしょう。
今回、ミュージアムでは公慶上人や江戸時代の東大寺復興に関係する資料を展示いたします。
展示資料から公慶上人の偉大な足跡を感じとっていただけることを願っています。
特集展示「公慶上人による江戸復興」展示品
1 重文 三論偈頌 江戸時代・元禄2年 1帖 紙本墨摺
公慶上人があらゆる方面に「中論」「百論」、「十二門論」の”三論”教学を流布させる
ことを願って刊行させたもの。公慶上人は三論を研究する学僧であった。
2 国宝 公慶上人書状 江戸時代・元禄12年 1通 紙本墨書
江戸に滞在していた公慶上人が東大寺の清凉院(しょうりょういん)に宛てた書状。
幕府や大名との交渉や勧進活動の様子を知らせている。
3 国宝 公慶上人年譜 江戸時代・宝永3年 1冊 紙本墨書
公慶上人の生涯を記した書。上人の近くにいた諸弟子から聞き取ったものを集成している。
上人の偉大な事績を今に伝えている。
公慶上人年譜
4 大仏殿釿始千僧供養私記 江戸時代・貞享5年 1冊 紙本墨書
大仏殿を造りはじめる初日の儀式(釿(ちょうな)始め)の記録。
7日間続いた儀式でお斎(とき)を受けた(食事をした)人は約6万人と記録され、
奈良が大いに賑わっていた様子もうかがえる。
5 国宝 公慶上人鉦鼓借用状 江戸時代・貞享4年 1通 紙本墨書
公慶上人が勧進活動の模範とした重源上人が所持していた鉦鼓(しょううこ)を借用する
ために提出した書状。
6 大仏殿虹梁木曳図 江戸時代・18世紀 1巻 紙本墨画淡彩
九州で切り出された大仏殿の巨大な用材を木津(京都府木津川市)から東大寺まで
陸送する様子を描いた図。綱を曳く人々や野次馬などをいきいきと描いている。
「大仏殿虹梁木曳図」(部分)